トップを含むさまざまなポストの候補者と活発な議論
新たな経営体制への移行に至るプロセスや、そこで議論の内容を聞かせてください。
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秋吉
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公平性と透明性を担保した経営体制であるために、当社グループでは、報酬・人事委員会を設置しています。経営トップなどの役員人事は、その構成委員である私たち社外取 締役3名の審議を経て取締役会で決定するというプロセスで あり、ガバナンスにおいて十分に機能していると考えます。
サクセッションプラン、つまり後継者計画に則った運用を監督することはその重要な任務の1つです。社外取締役と候補者との面談は、毎年、継続的におこなわれており、この2 年ほどで20名近い候補者の方々との面談を実施しました。皆さん共通して、極めて活発でしっかりとした意見を持たれている印象が強かったです。新社長については、当社グループの責任者として適任であると自信を持って選出できたものと評価しています。
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山田
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面談は決まったシナリオがあるわけではなく、当社グループに対する思いや課題などさまざまな質問を投げかけながら1回につき1時間ほどおこないました。これだけ時間をか けることで、人柄や本音が浮き彫りになったと思います。特にトップに必要なリーダーシップについて重視した有意義な話し合いができました。
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依田
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報酬・人事委員会の核となる活動が後継候補者との面談です。真剣に臨みながらも、ざっくばらんとした雰囲気づ くりを心掛け、仕事への思いや課題意識をオープンに聞かせ ていただいています。候補者の皆さんとは、取締役会やその準備などを通じて意見交換をする機会もあります。また、報酬・人事委員会では、候補者の育成方針も検討しています。研修に参加していただくこともありますが、そのフィード バックなども含めて、お一人お一人に対する理解を日頃から深めていくのも大事な取り組みだと考えています。
新たな経営体制にどういった点を期待していますか。
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山田
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企画部門が長く、ロンドン駐在歴や東日本銀行の再生にも力を尽くされた片岡社長はIR担当の経験もあり、株式市場を含め、多様な声に率直に耳を傾けられる方です。そのようなトップを支える、幅広い陣容での経営体制に非常に期待しています。
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依田
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私も“対話力”に期待しています。また、それに加えて、 海外勤務や東日本銀行での経験から、当社グループを “俯瞰して見る力” もお持ちだと感じています。そのような片岡社長の視点が、「ソリューション・カンパニー」という当社グループのこれからの姿を実現していくための大きな力になるのではないかと期待しています。
従業員を交えた長期ビジョンの策定を提言
新しい中期経営計画の策定について聞かせてください。どのようなプロセスで議論を深めてきたのですか。
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秋吉
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2021年6月の取締役会より議論が始まり、以後、定例や臨時での取締役会を通じて内容を深めてきました。
当初、私たち社外取締役が執行側に要求したのは長期的なビジョンの見直しです。中期経営計画は例えばトップダウンで3年間の計数目標を掲げることもできますが、得てして、その数字を達成するだけの姿になってしまいがちです。もちろん数字は大事ですが、それ以前に長期的な視座に立って3年間をどう位置付けるのかを共有することがまずは重要です。
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山田
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新しい中期経営計画の議論では利害関係者、いわゆるステークホルダーに評価されるかを重視しました。お客さま、地域社会、従業員、株主という4つの立場のそれぞれに期待を抱いてもらえるような内容であることが必要だと考えまし た。そのプロセスでは、海外を含めた他社の取り組みを参考 に議論を深めていきました。
特徴的な点の1つは地域社会の位置付けです。お客さまへの支援が、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続 可能な開発目標)への配慮を伴い、サービスの提供そのもので地域社会に貢献する色合いが濃くなっています。それを実行する従業員からもアンケートの回答を通じて、ソリューションの多様化を求めていることがわかりました。
もう1つは株式市場を含めた株主との対話です。投資家の企業価値への評価として非財務面が一層重視されるようになっています。また、経済事象が目まぐるしく変化する現在、中期経営計画も修正が加わる可能性をあらかじめ想定しておくことも大切だと提言しました。対話の機会を充実させるとともに迅速な対応で投資家の信頼を高めるべきだと思います。
新しい中期経営計画策定の議論を通じてグループの強みや課題認識を感じられましたか。
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山田
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銀行業務の本質が、貸出や預金の世界からソリューションへと変わってきています。法人のお客さまに向けては、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やSDGsの推進といったコンサルティングの領域が広がっています。こういったサービス提供にいち早く動ける組織の在り方や人財の育成が、当社グループのサステナビリティという面でも重要です。
幸い、当社グループは恵まれたマーケットと優秀な人財が揃っているのに加え、100年に及ぶ長い歴史から、お客さま やお取引先との深い関係を築いています。これまで以上に有意義な提案を重ねることで提供するソリューションの選択肢を広げていけると期待しています。
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秋吉
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神奈川県での圧倒的な存在感と東京地域での存在感はコンコルディア・フィナンシャルグループの大きな強みであることは間違いありません。また、外部の方から聞いても当 社グループの社員は非常に優秀であり、それは普段の会話を通しても実感として納得できます。経営の方向感さえしっか りと定まれば、今後の発展や成長が大いに望めると考えています。ただ、大きな変革期にあって、人財の育成や投資は積み残された課題です。最大の財産として、継続的な人づくりを推進すべきです。
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依田
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強みについてはお二人と同感です。マーケット、歴史、 培われた顧客との関係性、そして非常に優秀な社員の方々。 新しい中期経営計画で立てた目標を実行するための人財育成の重要性はどれだけ強調しても足りないくらいです。また、長期的にめざす姿を共有できるだけのコミュニケーションが 一層重視されます。
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山田
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新しい業務に挑戦するためのリスキリングは大変重要です。加えて、専門人財の採用も必要だと思います。すでにITやソリューションの部門で進んでいますが、市場部門を含めて外部からの採用を進め、こうした人財がリスキリングをリードしていけば銀行全体の空気感が変わっていくと思います。
率先して未来像を示していくソリューション・カンパニー
人的資本の拡充について、その方向性を含めた提言をお願いします。
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秋吉
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グローバルな社会・経済環境や金融市場環境が大きく変わる中で、銀行間のみならず、その他の分野からの参入者との競争が激化しており、従来からの伝統的な銀行業務では将来的に発展は望めないと多くの従業員はしっかりと自覚しています。金融知識だけでなく、サステナビリティな社会の実現に銀行としてどう応えていくかについて、もっともっと 勉強し、自らを変革し成長していきたいという従業員の意欲を、経営としてどのように実現させていくのか、そのために具体的にどのような機会を提供するのかが要諦であると考えます。
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依田
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新しい学びを通じて変化に対応していくためには “時間の捻出” も非常に重要です。事務的な作業を中心に既存の業務の効率化を徹底して進め、時間の無駄をなくす全社的な 取り組みが欠かせません。
加えて、普段の従業員の努力に対して上司である管理職が しっかりとコミュニケーションを取っていくことも重要です。2021年度より1on1の個別ミーティングを開始していますが、各マネジャーが自分自身のスキルアップに取り組みながら部下を育てていく力をつけていくことで、組織全体の人 財育成の底上げがはかれるのだと思います。
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山田
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普通の企業では一般的な「人事部」を、当社グループでは「人財部」としています。大変いい言葉だと思います。この人財価値を高めていく方策は2つあると考えています。
1つは経営陣と従業員の思いを一致させること。そのために経営陣はキャラバンと呼んでいますが、支店を巡りながら新しい中期経営計画が意図することを丁寧に話し、従業員との相互理解を深めています。対話をするほど課題も出るでしょうが、新しい解決策もいち早く出てくると思います。もう1つはジョブ公募制の拡充です。公募対象のポストを広げることで、個々人の問題意識を昇華させながら能力を高めることができるはずです。
今後のコンコルディア・ファイナンシャルグループへの期待と抱負を聞かせてください。
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秋吉
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ウクライナ情勢や世界的なインフレを大きなきっかけ として、日本の社会もいよいよ変革を起こす気運にありま す。これは銀行業を含めた金融界全体として言えますが、こ うした変化に対して自らリスクを取って新しい芽を育ててい く発想が大切です。健全なリスクを取りながら成長をめざす という議論を取締役会でも深めながら、地域を担う存在して 当社グループの誇りや地位を高めていきます。
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依田
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当社グループは総合力が強みです。例えば、グループ内のシンクタンクを通じた各種調査から、地域のポテンシャルを引き出す提案もできるはずです。豊富なリソースを軸に さまざまな提案をすることで、当社グループが、地域が希望を持って力強く歩んで行くためのプラットフォームにもなり得ます。新たなお金の流れを創り出すことで、自らが率先し て地域の未来像を示していくことのできるソリューション・ カンパニーとなる可能性もあると期待しています。その一方で、変化の激しい時代だからこそ、短期的な対応に追われてしまう可能性もあります。社外取締役としては、あるべき長期的な方向性を常に見据えて進むことができるように支援していきたいと思っています。