財務担当取締役メッセージ

ソリューション営業が実を結び、関連する役務収益がプラスに寄与。持続的な成長に向けた資本活用、十分な資本水準の確保、株主還元の強化の3つのバランスを取りながら、企業価値の向上に貢献してまいります。

企画部門での経験や知見を活かして貢献したい

コンコルディア・フィナンシャルグループという事業体 をビジネスで分解すると、地域金融機関としてさまざまな 機能を持ち合わせていることがわかります。地元企業同士の商品・サービスのニーズをマッチングさせる総合商社であり、事業性評価を通じた事業戦略立案や脱炭素支援をおこなうコンサルティングファームであり、企業価値向上に向けたM&Aや資本政策を提案する投資銀行の側面もあります。いわば人気の有望事業の集合体とも言えます。

こうした機能を総合的に持ち合わせ、しかも積極的に自己のバランスシートを使う稀有な存在が私たちです。機転と小回りの効くサポーターとしてお客さまに喜んでいただ ける存在であり、従業員にとっても、新しいアイデアをビジネス化できる業務領域の広さは魅力です。こうした強みを私たち自身がしっかり分析すれば、まだまだ企業価値の向上をはかることができると考えています。

私は1995年(平成7年)に横浜銀行に入行して以来、支店での法人営業の勤務を経て、営業施策や中期経営計画の策定、東日本銀行との統合シナジーの発揮、戦略的投資の実行などに携わってきました。

2022年4月に横浜銀行の取締役執行役員に就任し、同年6月にコンコルディア・フィナンシャルグループの取締役に選任され財務を統括する立場 となりました。片岡社長のもと、風通しのよい組織づくり を心掛け、社内外で自ら率先して対話を持ちかけたいと思います。企画部門を中心としたキャリアでの経験や知見を活かし、公正かつ効率的な遂行で、持続的な成長に貢献していきたい所存です。

実質業務利益は813億円と2018年度を上回る水準に

2021年度は、前中期経営計画の最終年度に当たりました。新型コロナウイルス感染症の影響が長引くなか、国内の景気回復も道半ばである状況下に追い打ちをかけたのがロシアのウクライナ侵攻です。世界的な資源価格の高騰を受けた国内物価高といった激動する環境で、難しい事業運営を迫られました。

ただ、私たちが取り組んできた構造改革がようやく、数字にも表れはじめ、業務粗利益(2行合算)は4期ぶりに増益となりコロナ前の2018年度の水準まで回復しています。2021年度の業績でお伝えしたいポイントは3つあります。

1つは「本業の収益力の回復」です。貸出金利息収入が増加基調にあることに加え、ソリューション営業が実を結び、ストラクチャードファイナンスといった法人向け取引 から得られる役務取引等収益が増加しました。店舗統廃合や業務プロセスの見直しで経費を削減したことも大きく寄与しました。本業の実力を示す実質業務純益(2行合算)は813億円と2018年度を上回る水準で、外部から高く評 価された点です。

一方で、次の中期経営計画に向けた「ダウンサイドリスクの低減」を進めたのもポイントの1つです。米国の金利上昇に伴って評価損が発生した外国債券の一部をロスカットしてポートフォリオの再構築をすすめたほか、コロナに よる事業停滞の影響が大きい飲食業と宿泊業に対する予防 的な引き当てを実施しました。

もう1つが「東日本銀行の黒字化」です。こちらも店舗の統廃合といったスリム化による経費削減のみならず、横浜銀行同様にソリューションビジネスを強化した効果が顕在化し、役務が大きく増加しました。その結果、当期純利益は3期ぶりに黒字化を達成しました。

ROEこそ4.9%と目標に据えた5%台半ばには届きませんでしたが、業務粗利益RORA、OHR、普通株式等Tier1比率といった指標は目標を達成することができました。

ROEを除く業務粗利益RORA、OHR、普通株式等Tier1比率は、目標達成 目標指数 18年度 業務粗利益RORA(連結) 2.5% OHR(連結) 61.4% ROE(連結) 5.2% 普通株式等Tler1比率(連結) 13.00% 19年度 業務粗利益RORA(連結) 2.5% OHR(連結) 62.4% ROE(連結) 4.3% 普通株式等Tler1比率(連結) 12.27% 20年度 業務粗利益RORA(連結) 2.3% OHR(連結) 67.7% ROE(連結) 2.3% 普通株式等Tler1比率(連結) 12.40% 21年度 業務粗利益RORA(連結) 2.4% OHR(連結) 59.2% ROE(連結) 4.9% 普通株式等Tler1比率(連結) 12.09% 前中計目標 業務粗利益RORA(連結) 2%台半ば OHR(連結) 60%程度 ROE(連結) 5%台半ば 普通株式等Tler1比率(連結) 12%程度

長期保有の投資家への期待に応え、利益成長に合わせた増配を

当社グループの基本的な財務戦略や資本政策の考えをお伝えします。上場企業として企業価値の向上をはかるうえで、ROE(自己資本利益率)はもっとも重要な指標だと認識しています。投資家からの期待値を勘案すると長期的には7%程度を維持できる企業体でなくてはならないと思い ます。その道筋として新たに策定した2022年度~2024年 度の新中期経営計画では6%の達成を目標にしています。 この数値は決して背伸びしたものではなく、これまでの経営基盤の強化を考えると十分に達成できる水準です。

そして、企業価値の向上をはかるうえで3つの軸を据えています。1つ目は「資本活用」です。お客さまのファイナンスニーズに応えるのは1丁目1番地です。従来からのシニア ローンのみならず、投融資に近い高付加価値のファイナンスの提供に引き続き注力し、リスクアセットを積み増すことで、資本を有効に活用したいと考えています。

2つ目が「健全性」です。銀行業として、大きな金融危機といったテールリスクが起きた際にも、お客さまの資金ニーズにきちんと応えられるだけの資本水準を確保し、その水準を見定めて、常にコントロールすることが重要です。

3つ目が「株主還元の強化」です。長期保有の投資家への期待にしっかり応えていくことを念頭に、累進的な配当を基本とし、利益成長に合わせた増配をめざします。あわせて、単年度に蓄積された利益は、資本効率性の観点からもしっかりと株主に還元していく考えです。従来35%以上を方針としていた配当性向は、今回40%程度に引き上げま した。2022年度の一株当たり配当金は19円としており、配当性向は41%になる計画です。さらには総還元性向についても意識しており、自社株式の取得は市場動向や業績の見通しなどを見極めたうえで、柔軟かつ機動的に対応していく方針です。

高付加価値のファイナンス分野をさらに広げたい

新しい中期経営計画では、2024年度に達成する目標として、ROEを6%程度まで向上、OHRを50%台前半に低下、普通株式等Tier1比率を11%台半ばでコントロールするといった計数目標を掲げました。目標達成に向けて、資本コストを上回るリターンを上げ ていくことが肝要だと考えています。そのためにも高付加価値のファイナンス分野を国内外問わずさらに広げ、リスクアセットの積み増しに資本を充てていきたいと思います。

私たちの法人のお客さまは上場企業であっても中堅規模 が多く、資本政策提案を必要とされているケースがまだまだあるはずです。エクイティまで踏み込んだ領域でのファイナンスは、伝統的な銀行員の考え方とは異なる資質が求められるため、思考の切り替えができる人財育成にも力を注ぎたいと思います。また、これまで十分に経験していない領域で新たなリスクテイクをしていくため、債権管理を含めたリスクコントロールを機能させる体制づくりも重要です。

既存のビジネスラインの延長線上にある機能強化は、地域のお客さまに貢献できる面も多く、オーガニックな成長が遂げられるビジネス領域は、パートナー企業との協働やグループ機能の強化などを通じて、これからも広げていきたいと考えています。

インオーガニックな領域も規制緩和により新事業の可能性が増えています。加えて、国内外の他の金融機関との連携強化も引き続き検討していきたいと思います。戦略的投資については私たちの営業戦略などと整合性が取れ、資本コストを上回るリターンがあり、なおかつリスクコント ロールできるものを吟味して検討していきたいと思います。重要な投資に取り組むうえでは、日頃から取締役会での議論を通じて、各メンバーと目線を合わせておくことも 大切です。

ステークホルダーとの対話を質と量の両面でより充実に

政策保有株式については、従前より縮減する方針を定めており、継続的に圧縮を進めています。普通株式等Tier1 に対する政策保有株式の比率はすでに8.1%と地方銀行の中では最低水準にあります。現在、保有する株式も経済合理性の観点のみならず、地域経済の活性化や取引関係の強化といった定性的な価値をしっかり認識していることが大切です。対象企業とは緊張感のある関係でのエンゲージメ ントを心掛けています。

株主をはじめとするステークホルダーの皆さまとの対話を、質と量の両面でより充実をはかっていきたいと考えています。2021年度は国内外の機関投資家の皆さまとのラージミーティングや、アナリストの方との個別ミーティングの機会を継続して持ったほか、個人投資家の皆さまには、コロナ下ということもあり、オンライン説明会を通じて、当社の事業や業績についてご理解いただけるよう努めました。今後は環境が許せば対面での機会を増やしていきたいと思っています。

非財務情報の開示や、戦略的なIR(インベスター・リレーションズ)の実践を強化していくため、4月に経営企画部内にコーポレートコミュニケ―ション推進室を立ち上げました。人的資本の活用やサステナビリティといった投資家からの関心の高いテーマに特化した対話の機会も検討しています。対話を通じて把握したご意見や気づきはスピーディに経営陣で共有していきます。

「地域に根ざし、ともに歩む存在として選ばれるソリュー ション・カンパニー」という長期的にめざす姿に向けた取 り組みを投資家の方々にしっかりとお示ししながら、バランスの取れた資本運営を実践していくことで、企業価値のさらなる向上に貢献してまいります。